第23回BELCA賞ロングライフ部門表彰建物 |
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キングホームズ代官山 |
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所在地 |
東京都目黒区上目黒1-8-10 |
竣工年 |
1975年(昭和50年) |
建物用途 |
共同住宅(賃貸) |
建物所有者 |
根津 公一 |
設計者 |
大成建設 |
施工者 |
大成建設 |
維持管理者 |
去O事保全社 |
キングホームズ代官山は1975年竣工の高級賃貸マンションである。敷地は『目黒元富士』と呼ばれる富士山信仰の場として、また由緒ある緑の森として親しまれている場所である。竣工当時は、それぞれの住宅ユニットの広さはもちろん、住宅設備としても最先端でまさしく「マンション」という名にふさわしいものであった。築38年の年月を経て、住宅設備の老朽化とともに今の技術からみると非効率で使いにくい状況になり、また耐震性等の諸問題も懸念されるところなっていた。 当然のごとく、建替が検討された。しかしながら、全面建替案を採用した場合、昭和53年に施行された日影規制の制約から大きく建物配置の変更を余儀なくされ、貴重な森そのものも大きく改変する配置計画とする必要がある。森に包まれた敷地をできるだけ保全したいとのオーナーの強い意志をベースに、合意形成が得られやすい賃貸マンションという用途であったこと、共同住宅としては面積も広く階高も3.2mと比較的高く設備配管縦シャフトも完備しており長寿命建築として元々備えられていたこと等に助けられて、全面建替案でなく大規模改修が選択され、森が保全されたことは幸運であった。 大規模改修は、更なる「長寿命化」、現代の技術水準の「省エネ・省メンテナンス」、将来にわたっての「安全安心なくらし」を主眼に行われた。耐震診断をもとに、屋上に設置されていた冷却塔・高置水槽を撤去して軽量化は図り、低層部で必要箇所に柱の炭素繊維巻補強や柱梁の増打ちを行い耐震性能の向上を行っている。空調・給湯設備は中央熱源方式(吸収式冷凍機・蒸気ボイラー)から各階のバルコニーを活用した個別方式の空冷ヒートポンプエアコン・ガス給湯器に変更し、空調・衛生設備の金属製配管を塩化ビニル管・架橋ポリエチレン管に更新し耐久性耐食性を向上させている。非常用電源として燃料搭載型ディーゼル発電機200kVAを設置し災害時への備えも充実させている。自動火災報知設備はGR型に更新し、各住戸の部屋に感知器が設置され防災性能は向上した。タイル張りの外壁は全面調査しタイルの劣化を確認の上張り替えを行い安全性を向上させている。タイル張替えに当たっては街並み景観の保全の配慮から30年以上前のタイルの色や風合いを再現しながら改修を行っている。既存サッシュ枠を工夫してサッシュの二重化も行われ遮音・断熱性能の向上も図られている。ただ、床版については元々スラブ厚12センチの直床で上下住戸間の遮音性能として十分とは言えずカーペット仕上げの内装で凌いでいることは残念である。 今回の改修では上部2層が内装未施工であるが、長期の改修・修繕計画の中で順次施工してされていく計画である。加えて、森の維持管理計画も用意されており、環境保全の積極的取組は高く評価できるものである。 |
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