16回BELCA賞ベストリフォーム部門表彰物件

アップルストア銀座
(サエグサ本館ビル)

所在地:東京都中央区銀座3-5-12
竣工年1967
改修年2003
用途:(改修前)事務所
      (改修後)店舗・事務所
所有者:サエグサビル
アップルコンピュータ
改修設計者:ボーリン・シウィンスキー・ジャクソン建築設計事務所
          KAJIMA DESIGN
改修施工者:鹿島建設        


 銀座通りに面する築後40年近くになる「サエグサ本館」のリニューアルである。現在、銀座通りは、商店街店主が中心となって町の活性化を進めており、当建物はその運動の主要メンバーであるオーナーの強い意向のもとで進められたものである。
 元々当ビルは、B1階から5階までを銀行支店が入居することを前提として設計されており、階高やスパンも難しい条件であったが、省資源・廃棄物削減の意味から、敢えて改修に踏み切るとともに、銀行再編という波を捉え、全く違う業種を入れることによりに新たな街並みを作るという試みにチャレンジしている。
 外観として、低層部はステンレスパネル貼りとし、上層階のダブルスキンの開放感あるデザインと対比させ、隣接建物等との調和を図りながらも銀座通りに新しい景観を提案している。構造的には、一階正面の中間柱を撤去して大きなエントランス開口を確保した他、一部のスラブレベルの変更、吹き抜けやエレベーターを追加設置するという大掛かりな改修を行なっている。設備的にも、腰壁を撤去したダブルスキンの上下の開口により、内部に上昇気流を発生させ省エネ効果を図っている。防災面では、排煙設備に加えて、テナントのグローバルスタンダードに沿ってスプリンクラーを新設し、時代に沿った付加価値の向上を図っている。これは保険料軽減にもなり、維持管理費の節減に繋がるものである。又、繁華街の中心地で、上層階テナントが入居した状態のまま改修するという難易度の高い改修に、綿密な構造・設備計画と施工計画で応えている。店舗内部デザインについても、従来のアップルストアはガラスの階段が特徴的であるが、平面的制約からガラスのシースルーエレベータとして解決し、奥行き感を与えるとともにIT店舗らしい躍動感を生み出している。
 法規的にはかなり厳しい制約がある処を、オーナーの銀座活性化に対する熱意で解決されている点も見逃せない。やはり建物は建築主・設計者・施工者・行政・近隣等ステークホルダー(関係者)が一つになってこそ良いものができると実感させられた次第である。
 銀座の中心にIT関係の若者が集うという新たな試みは成功し、銀座通りに新しい息吹を与えて街並み活性化に貢献している。