第15回BELCA賞ベストリフォーム部門表彰物件
東京大学赤門総合研究棟
所在地 東京都文京区本郷7-3-1
竣 工 1965年
改 修 2003年
用 途 大学(改修前後とも)
所有者 国立大学法人 東京大学
改修設計者 東京大学施設部
香山壽夫建築研究所
轄イ藤総合計画
鞄本エアコンセンター
改修施工者 大成建設梶Aオーバーシーズ・ベクテル・インコーポレーテッド
振興電気梶A第一工業梶A鞄立製作所
この建物は、1960年代の大学拡張期の本郷キャンバスにおいて建設された教育・研究施設であり、鉄筋コンクリート構造の打放し仕上げの箱型建築である。しかし、景観上重要な赤門、および戦前からキャンバスを形成してきたネオ・ゴッシク様式との調和は、十分に図られたものではなかった。
1984年の増改築で、西面ファサードの細部がネオ・ゴシック様式にアレンジされ、スクラッチ・タイルにより一部修景された。
今回の改修では、20年ぶりに北面ファサードも作り変えられ、キャンバスの基調をなすネオ・ゴシック様式の細部と比例構成を、現代的に解釈し直している。既存ベランダの外側に新たに構築した耐震壁をデザインし、中間部は高さ20cm鉄骨鉄筋コンクリート壁で分節し、スケールダウンさせるとともに、スクラッチ・タイルを用いて、街並みとの統一を図っている。その上層部では、鉄骨造の補強フレームで、ピラスター(付け柱)とファイニアル(柱頭)を表現し、調和を図っている。
南面の面内補強による耐震補強は、ブレースを用いず、鉄骨格子フレームを既存躯体構面に嵌め込むもので、全く違和感がない。内部は、既存の耐力壁を生かし、雑壁を撤去し、空間のフレキシビリティーを高めている。また可動間仕切りを多用し、フリースペースやオープンスペースを設け、利用形態の変化に対応できるようにしている。
設備・維持管理を考えると設備については、従来バラバラであったものを配管類の集約、機器の見直し、空調方式の変更又情報系配線等をまとめることにより、一括管理する事ことが出来、省エネを含め維持管理コストの低減が図られている。
LCCについても、長期的にしっかりした修繕計画が作成されており、将来長期にわたり維持保全を考えている。又維持保全体制についても、統括管理者を置き、緊急対応、保守業務の指示系統もしっかり考えられている。
露骨な耐震改修が目立つ中で、耐震補強を景観修復に用いた素晴らしい改修工事で、デザインの質の高い建物である。