第14回BELCA賞ベストリフォーム部門表彰物件
立教大学第1食堂
所在地 東京都豊島区西池袋3-34-1
竣 工 1918年
改 修 2002年
用 途 学生食堂(改修前後とも)
所有者 学校法人 立教学院
改修設計者 立教大学管財部施設課
(株)坂倉建築研究所
改修施工者 清水建設(株)
立教大学の池袋キャンパスは、大正7年(1918)に同校が築地から当地に移転したことに始まる。キャンパス内には、すでにBELCA賞を受賞している「諸聖徒礼拝堂」(第11回ベストリフォーム部門)など、本館周辺には、キャンパス開設当初の煉瓦造が群として保存されている。キャンパスのこの一帯は、「メモリアルゾーン」と名づけられている。第1食堂は移転当初から存在する煉瓦造の一つで、東京都の歴史的建造物にも選定されている現役の校舎である。
改修前の食堂内部は、学生数の増加もあり、後に追加された照明器具や空調ダクトなどによりかなり雑然としていたという。今回、食堂の裏に規模の大きい厨房を新築し、ここで設備機器、搬入搬出装置など、総ての裏方機能を処理し、食堂を「食事をする場所」に純化させたことがこのリフォーム事業を成功させた鍵である。
耐震補強に当たっては、創建当時のイメージを残す正面外観には手を加えていない。これが実現出来たのも、食堂棟裏側にあった厨房棟を新しいRC造で建て替え、厨房棟で煉瓦造の食堂棟を支えているためである。食堂棟は耐震改修促進法による耐震補強、厨房棟は建築基準法による増築、この二つの計画を組み合わせたユニークなアイディアである。
空調に関しては、ダクトを含めて一切の空調機器類が食堂内から撤去された。そのためには、総ての空調機器を厨房に付属させ、空気は食堂棟のガラスを外した窓へ、通路をまたいで厨房棟から高速、ダクトレスで送り込むという手法が使われて居る。
照明を更新した食堂の内部は、器具の振れ止めもアクセサリーに仕立てられ、耐震補強も目立たず、空調設備もなく、メモリアルゾーンの学生食堂に相応しい素朴で、古典的空間が再現されている。厨房棟にはパーティールームが設けられるなど、新たな機能も付加され利用者の利便性も高められた。
本物件は、保存に止まらないリフォームの実施例で、今回のリフォームにより、姿は原型に再現され、機能は現代に蘇生された。