第30回BELCA賞ベストリフォーム部門表彰建物 |
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嵐山カントリークラブ クラブハウス |
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所在地 |
埼玉県比企郡嵐山町鎌形1146 |
竣工 |
1961年 |
改修年 |
2019年 |
建物用途 |
クラブハウス |
建物所有者 |
蒲虫Rカントリー倶楽部 |
改修設計者 |
潟<Oロ建築研究所(平井充+山口紗由)、概IS&PARTNERS、潟泣i・デザイン・ラボ、滑ツ境デザイン・エイアンドエヌ |
改修施工者 |
白石建設 |
嵐山カントリークラブは、1961年竣工、原設計は天野太郎である。 外観構成は、伸びやかに広がるフェアウエー・グリーンの自然景観に調和し、水平線を基調にデザインされている。そして屋根・テラスの直線の伸びやかさと円形のボリュウムのある壁の対比が美しい建築である。 2階レストランの空間構成は、長方形の屋根スラブが階高約3.7m天井高約3.1mに浮かんでおり、外部へと視線の抜ける欄間の開口部によって、内部から外部の風景、自然の木々や山並みへの空間の連続性が感じられる。 レストラン・ラウンジのインテリアは,外へと自然に広がる視線を心地よくリズミカルに包む細い柱、フラットな気持ちの良い高さの天井、円形の自然光を通すトップライトが印象的な空間である。 フランク・ロイド・ライトとアルバ・アアルトのデザインの流れが背景に感じられる。 1961年から2009年、当初竣工時に90人であったメンバーが、バブル期には200人にも増加し使用上の必要性から6度の増改築を行ってきた。その結果、原設計のデザイン・外観構成・インテリアの空間性が、積み重なり損なわれてきていた。 設計者は、これまでの経緯を整理して課題を抽出し、新しい時代に適応させて改修することが、結果として竣工時のデザインを復元するという取り組みを行っている。 レストランの床は、スパイク対応からカーペット敷に改修されていたが、現在はソフトスパイク使用であるので、竣工時の木フローリングブロックに改修。耐震補強のために床下地モルタルを撤去し50tの重量を削減、床下配線スペースを設置した。フローリングブロックに自然光が反射し明るくなり、増設のシャンデリアが撤去でき、原設計デザインにおける、木の床と木の天井による空間構成が、オリジナルの魅力を蘇らせている。同様の取り組みが各所で設計されている。 現在の増加する女性メンバーへの対応として、狭隘な地下女子ロッカー室浴室の環境改善に取り組み、ゆとりのあるスペースを確保し、オリジナルデザインと調和させたデザインに改修した。クラブハウスが男女ともに快適に過ごせる場となった。 現状、設備面ではエントランス・レストラン・ラウンジ・女子ロッカー室などの改修された部分について高効率空調機およびLED照明器具への更新が行われている。今後、改修計画により更新を進め、重油蒸気ボイラの中央暖房方式からLPガス給湯器による局所給湯方式および個別空調方式への全面改修、加圧給水方式への更新、LED照明器具への更新により設備の省エネルギー化を計画している。受変電設備の更新時にLPガス低圧非常発電機設置が計画されBCPへの対応も考慮されている。今後50年使用し続ける目標を設定し、工事を進めながら段階的に改修を行う長期使用に向けた維持保全計画書を作成している。 時代の変化に伴うクラブハウスの使い方の変化に合わせて建築・設備が設計されたリノベーションが行なわれ価値を高めている。設計者は、今の使い方を利用者・建築主と綿密に話し合い改修に取り組み、同時に、天野太郎の設計した空間構成、建築の素材の肌触りを深く理解し大切に扱い利用者・建築主に伝えて設計をしている。 |
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