第30回BELCA賞ベストリフォーム部門表彰建物 |
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南山大学(G30・G棟・F棟・H棟) |
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所在地 |
愛知県名古屋市昭和区山里町18 |
竣工 |
1964年 |
改修年 |
2018年 |
建物用途 |
教室(大学) |
建物所有者 |
学校法人 南山学園 南山大学 |
改修設計者 |
鞄本設計、椛蝸ム組 |
改修施工者 |
椛蝸ム組 |
本プロジェクトはキャンパス全体の教育環境の活性化を目指し、内外装改修、安全性・利便性向上を進め、アントニン・レーモンドによる建築の価値を保ちながら再生を行う整備である。 1964年竣工のモダニズム建築の保存活用と現代の大学建築に求められる教育環境の整備の両立が確実に図られている。 南山大学では2017年度に「レーモンド・リノベーション・プロジェクト」を立ち上げた。教職員、卒業生、特に若い世代の学生にもその価値を伝えることを意図し、より長期的な大学の発展と建築文化の醸成を行うビジョンを持っている。 設計者は基本方針ガイドラインを基本設計開始前に策定している。レーモンド建築の固有性を持つ部分の「保存部分の設定基準1・2」、性能確保の改修において意匠上の形状色彩を継承配慮する「保全部分の設定基準3・4」、「その他部分の設定基準5」に分けて設定し全棟共通の改修計画のガイドラインとしている。 現代の大学キャンパスは、学生にとっては、日常の快適な生活空間であり、かつ、アクティブ・ラーニングな学習空間が求められている。 それに対し、学生の生き生きとした生活空間及び、学習空間を創ろうという設計者チームの意図が感じられた。レーモンドのヒューマンスケールな構造体や内装のデザインと相まって、学生のための優しく暖かい、またアクティビティの高い空間へと考えられている。 コリドーは、ヒューマンスケールな柱・梁のサイズ・スパンと気持ちの良い天井高さの空間を活かしながら、新たに透明なガラススクリーンを設計し、学生たちの内部と外部をつなぐ活動の風景を創っている。 外観の特徴となる庇・ルーバーは全箇所の打診調査および防錆・モルタル補修、仕上げ水性フッ素樹脂塗装(上面ウレタン塗膜防水)を行っている。 赤土色の壁は、体育館内部に退色していない部位を発見したため、新築時の塗装に近い基調とし色合わせ・モックアップ検討を行っている。コンクリートの壁に水性フッ素カラークリア塗装で丁寧に赤土色に再塗装され、打ち放しコンクリートの表情と合わせて、メインストリートの活発さの感じられる外部空間を形成している。 教室の内装においては木の素材の色を活かした明度の高いコーディネートと、サイドからの自然光により快適で集中できる環境となっている。 大教室は原設計の構造体の梁を見せるデザインを継承しながら、新たな天井木パネルにより明るくデザイン構成をしている。天井木パネルには現代の必要な設備が納められ、聞きやすくするための吸音性能を確保している。 メインストリートの美しい中央アーケードの庇やランドスケープにおいては、学生の居場所をつくる環境整備がされている。 施工は既存と新設部材の納まりの調整も含めて確実に計画され、適切に綺麗に仕上がっている。 自然環境と調和した建築として、室内環境面でも自然採光・通風、南ガラス面の横ルーバーによる日射遮へいなどを活用してきたが、今回のリフォームでは環境配慮技術として、外部環境にかかわらず安定した換気量の確保をしながら省エネルギーも図るために全熱交換器を採用し、また照明も全面LED化を図った。これらにより床面積の増大もある中で消費エネルギーの増加も抑えることにつなげている。 また大教室の温熱環境についても、温熱シミュレーションによる妥当性確認を継続し、良好な温熱環境を形成している。 |
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