第30回BELCA賞ベストリフォーム部門表彰建物 |
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テラス沼田 |
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所在地 |
群馬県沼田市下之町888 |
竣工 |
1993年 |
改修年 |
2019年 |
建物用途 |
[改修前]商業施設 [改修前]市庁舎を中心とした複合施設 |
建物所有者 |
沼田市 |
改修設計者 |
潟vランツアソシエイツ、潟eィ・アンド・エイ アソシエイツ、椛麹設備計画 |
改修施工者 |
沼田土建梶A萬屋建設梶A角屋工業梶A滑ヨ電工、叶{田電工、反町工業梶A藤田エンジニアリング |
テラス沼田は1993年3月に竣工した大型商業施設を、減築という手法を用いて市役所にコンバージョンした建築である。 一つの大型商業施設によって集客を行うというプログラム自体が時代と乖離し、長らく市の中心部にあって不良債権化していた商業施設を市庁舎として再生し、今後50年以上にわたり新しい市庁舎として使い続けるための様々な工夫がなされている。既存建物は商業施設という用途から閉鎖された空間の積み重ねであったが、市民が集う開かれた空間へ生まれ変わらせるため、各所にテラスと開口部を設けて外部との連続性を確保するだけでなく、今まで見ることができなかった美しい山並みなどを見る場となっている。また、1辺60m以上に及ぶ無窓の建築物であったが、市役所のメインフロアである3階中央に最上階まで床を撤去する減築によりアトリウムを創造し、それに向けても施設を配置することで、施設中央の付近の部屋であっても、トップライトからの自然の光と風を感じることができるようになっている。 既存建物は新耐震基準での構造設計であったが、減築による荷重低減とともにブレースの追加や基礎の補強などの耐震補強を行うことにより、建物の重要度係数1.5を確保して防災機能を備える災害時の拠点となる施設としての性能を確保している。 市庁舎としての適正規模を考えると既存建物はかなり巨大で、減築により建物規模の適正化を図り、維持管理に伴うランニングコストを最小化している。施設のスリム化の方策の一つとして、議場の多目的利用も図られている。ひな壇形式ではなく平土間とし、議会開催時以外には市民の多目的な利用ができるよう配慮されており、市民にとってより身近な施設となっている。 設備機器については既存設備の大半が耐用年数を過ぎていたことから、用途に応じた設備への更新を行うことでランニングコストの削減を行い、さらに屋上にあったキュービクルや非常用発電機を屋内に設置することで、メンテナンスのしやすさと長寿命化を図っている。 課題としては、現時点では長期使用に向けた維持保全計画は策定できておらず、今後市役所としての運用開始後の維持管理に関するデーターを分析した上で、設計者・施工者も含めた協議により長期保全計画を策定する予定となっている。 手をこまねいていれば朽ちていく建物を、今後数十年間にわたって使い続けられる建物に再生する手法の一つとして高く評価できる。 |
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