第29回BELCA賞ベストリフォーム部門表彰建物 |
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白井市庁舎 |
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所在地 |
千葉県白井市復1123 |
竣工 |
1981年 |
改修年 |
2018年 |
建物用途 |
市庁舎 |
建物所有者 |
白井市 |
改修設計者 |
蟹NA新建築研究所 |
改修施工者 |
大成建設梶A住友電設梶A樺ゥ日工業社 |
既存の白井市庁舎は旧耐震基準での設計であり、東日本大震災時に被害を受けたため、地域の防災拠点としての役割を十分に果たせなかった。また竣工後約30年を経過していたため、狭隘化や内外装の老朽化等の課題を抱えていた。そこで、災害対応力を備え、行政効率の向上も図ることができる庁舎の整備が求められ、@全面建て替え、A耐震改修による継続使用、B減築+増築の3案が比較検討された結果、B減築+増築が選択された。 この選択は以下の3つの観点から妥当性が高いものといえる。1点目は人口減少時代を迎え、また変化が激しい時代にあって将来の行政需要を見通しにくい状況を踏まえると、既存部分が耐用年数を迎える概ね30年後に改めて庁舎のあり方や規模を検討し、その時代のニーズに適った再整備計画を策定できること、2点目は環境配慮の観点から健全な構造体を長期にわたって利用し続けること、3点目は財政状況の厳しさが続くことが予想される中にあって、将来の再整備計画を見通しても事業費を圧縮できることである。 本計画に際して、東日本大震災後の2011年7月には庁舎整備検討委員会が設けられ、@8階建ての既存庁舎を4階建てに減築することにより補強無しで耐震性能を確保する、A既存庁舎の4階に庁舎のシンボルとなる先進的な議場を設ける、B減築した面積に相当する規模の新庁舎を既存庁舎に隣接して増築する、C新たに増築する部分を仮使用して仮設庁舎を無くすことが整備方針として策定された。また早期整備が求められたことから、ECI方式を採用することにより実施設計時から施工者の技術を十分に取り入れ、増築〜減築〜既存改修という複雑な工事を24か月弱で完了させている。 この様に進められた計画では、新たに増築した部分と減築した既存部分が水平ラインを強調したデザインにより一体感を感じさせるとともに、既存部分の4階に設けられた議場の大きな壁面と屋根のデザインがアクセントとなって、全てが新築であるかのような印象を与えている。また、南側に隣接する保健福祉センターと既存部分との間に設けられた増築部分はそれら二つを結び付け、三つのボリュームがリズミカルに雁行する姿が印象的である。 庁舎のシンボルとして計画された議場に関しては、大空間を形成するために5階の床を撤去して吹き抜けを造り、その上に鉄骨の格子梁による軽量化した屋根を掛け渡している。議場のレイアウトは対面式の採用により、傍聴席の市民が議員・執行部ともに見渡しやすい構成となっていて、ハイサイドライトからの自然採光による明るい空間と相まって、市民に開かれた庁舎のシンボルとして相応しい空間となっている。 電気設備的については、BCP対策の一環として受変電設備を地下階から屋上に移設し、既存部分と増築部分とに電源エリアを分けた上でそれぞれに変電設備を設け、幹線もエリア分けを行っている。電源の信頼性向上を行うとともに、防災拠点であることを考慮して自家発電設備も300KVAから400KVAへ変更した上で屋上階に設置し、72時間対応の燃料タンクを新設している。また、屋上に10KWの太陽光発電装置を設置し、災害時の補助電源としている。 空調設備についても、地下階にあった熱源のガス炊き冷温水発生器と各階のファンコイルユニット・ユニット型空調機を撤去、屋上に熱源としてヒートポンプユニットを設置し、各階にパッケージ型空調機を設置することで、災害対応とローカル装置単位での分散制御を行っている。また、このことが照明器具のLED化とともに消費電力の削減に貢献している。 以上のような取り組みに対する「日本建築防災協会理事長賞 耐震改修優秀建築賞」の受賞からも、その成果がうなずける。BELCA賞受賞を通じて、今後の施設更新計画の参考事例として広く参照されることを大いに期待するものである。 |
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