第29回BELCA賞ベストリフォーム部門表彰建物 |
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旧名古屋銀行本店ビル |
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所在地 |
愛知県名古屋市中区錦町2-20-25 |
竣工 |
1926年 |
改修年 |
2018年 |
建物用途 |
[改修前] 事務所(竣工時:銀行、改修前:事務所) [改修後] 集会場(結婚式場) |
建物所有者 |
名古屋デベロップメント特定目的会社(三菱地所梶j、積水ハウス梶A咳lan・Do・See |
改修設計者 |
且O菱地所設計、ハーシュ・ベドナー・アソシエイツ |
改修施工者 |
樺|中工務店、飛島建設 |
1926年竣工で、名古屋市都市景観重要建築物の第一回(1989年)指定建築物である旧名古屋銀行本店ビルを保存・改修したプロジェクトである。 改修後にこの建物をどのように活用していくのかが最も重要な課題であったが、これに対して、歴史的建築物のイメージに沿った結婚式場(集会場)を作るという方針のもと、それを運営するテナントに一棟貸しすることからプロジェクトをスタートさせている。そして、事業的課題の解決策として、保存・活用のイニシャル・ランニングコストを捻出するため、街区再開発による計画(保存棟+高層棟)を立て、建築基準法第86条第4項(総合設計+連担)を名古屋市において初めて利用し、容積率を800%から963.4%への割り増しを実現した。このようにして高層棟の床を増やす仕組みを作り、事業性を改善している。 保存に関しては、旧建物の現外観と当初の内部装飾を可能な限り保存・継承している。外観について、既存石貼部はアルカリイオン水による洗浄としみ抜き、塗装部分は竣工当時の色合いに近づけるべく、当時の写真等を基に石目調吹付塗装の再施工を行っている。そして、柱頭部の特徴的な装飾をライトアップし、夜景が街並みに彩りを与えている。また、1・2階はレストランという、誰でも利用できる施設とするために、閉塞されていた2階の床を撤去して竣工時の銀行建築の特徴的な吹抜空間を復活させ、新たに階段を設置することで利便性を図っている。トイレの出入口など、旧金庫室の内部装飾を保存して銀行建築だった記憶を継承している。 1951年に増築された既存屋上倉庫は、構造上の制約から概ね同じ規模で作り替える「模様替え」により、チャペルとしているが、屋根高さを抑えて周辺道路からは見えないようにしている。このチャペルは結婚式場としての機能や価値を向上さているが、さらにその前面の水盤には水深1pの水を張り、積載荷重の制限をクリアした上で、熱負荷を抑制する屋上水景となっている。 耐震補強に際しては、軽量化と偏心の改善を第一に考えて剛心が重心に近づくような配慮と、建物中心に披露宴会場の大空間を作るために新設耐震壁を配置し、2001年の部分的耐震補強にて設けられた既存耐震壁を有効利用しつつ、新たに増設を行っている。 歴史的建築物の改修においては、現代の設備仕様に合わせると機器ボリュームや荷重が増大し、設備室の面積拡大、構造補強、下がり天井の増設など建築空間の有効活用を阻害する問題が生じがちだが、本改修においては、設備棟を増設することでその問題を解決している。設備機器等を集約して配置することで日常のメンテナンスや将来の機器変更の容易さにも配慮している。 都市の記憶に残る歴史的建築に対して、事業計画に裏付けられた保存・活用・維持管理が実践されており、これからのストック社会における好例と言えよう。 |
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