第28回BELCA賞ベストリフォーム部門表彰建物 |
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春日大社国宝殿 |
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所在地 |
奈良県奈良市春日野町160 |
竣工 |
1973年 |
改修年 |
2016年 |
建物用途 |
[改修前]美術館 [改修後]美術館、倉庫 |
建物所有者 |
宗教法人 春日大社 |
改修設計者 |
弥田俊男設計建築事務所、鰹體c設計、泣IーノJAPAN、叶X村設計、渇ェ安泉照明設計事務所、Studio REGALO |
改修施工者 |
椛蝸ム組、鰍ォんでん |
春日大社が所有する国宝・重要文化財等を所蔵展示する美術館である。その多くが平安時代製作の宝物であり、「平安の正倉院」とも言われている。この美術館が、これまでの鬱蒼とした木々の奥にある閉鎖的な姿から、杜の広場に面する開放的な姿へと生まれ変わった。今回の増改築によって新たな価値が生み出されている。 春日大社宝物殿は、昭和48年に谷口吉郎氏の設計により建てられたものである。竣工後40余年が経ち、耐震補強・収納スペース不足の改善・設備の全面更新やバリアフリー化を行うとともに、建物正面側と裏側にそれぞれ増築して、展示ホール及び倉庫を新設している。増築は非常にシンプルなプランで行われているが、動線は大きく変更されている。しかし、既存のピロティによるバランスの良い浮遊感は維持され、エントランスや展示空間が人をいざなう演出のもとに繋がっている。最初の展示空間は「神の気配を感じる」導入部で、「神垣」として光をうまく使った暗い印象的な空間をつくり、その後にメインの明るい?太鼓(だだいこ)ホールへ続き、2階の展示室へゆったりとした階段が伸びる。鎌倉時代から伝わる?太鼓が展示されたホールには、既存屋根の流れを受けて延伸された屋根と縦格子の入ったガラス面から柔らかな光が差し込んでくる。ディテールも含め緻密にデザインされた巧みな動線を演出している。カフェの増設も含め、多くの人々を呼び込む機能と魅力を兼ね備えた増改築が、きめ細やかなデザイン手法によって実現されている。 収蔵庫の空調は、展示室と従来一体だったものを独立させ、収蔵庫専用の冷媒再熱タイプの空冷パッケージを採用し、安定した温湿度環境を確保している。また、室内汚染物質の除去には汚染ガス吸着シートを採用するなど、維持管理費用にも配慮した仕様としている。さらに、既存の屋根を残してカバー工法を採用することで、高い断熱性と防水性も実現し、長期の使用に耐えられるものにしている。 これらに加え、所有者・設計者・施工者が一体となって維持保全計画書を策定し、長期使用に向けての維持管理体制が構築されている。エンジニアリング的にも、建築計画的にも、再生という言葉がふさわしい増改築が行われている。 |
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