第27回BELCA賞ベストリフォーム部門表彰建物

新宿三井ビルディング

所在地

東京都新宿区西新宿2-1-1

竣工

1974年(昭和49年)

改修年

2016年(平成28年)

建物用途

事務所、店舗、駐車場

建物所有者

三井不動産

改修設計者

鞄本設計、三井デザインテック梶A鹿島建設

改修施工者

鹿島建設梶A三井デザインテック梶A東光電気工事梶A鰹骭研究所、三機工業梶A新日本空調
 西新宿再開発のはしりの超高層ビルである。1974年(昭和49年)竣工、築44年になる。
建物所有者の都市コンセプト「経年優化の街づくり」(時を経るごとに成熟し、さらに価値を高めていく)の思想を強く感じさせられるビルである。
 最新鋭のビルと同等の競争力を維持し続けるために直近では、主に@共用空間の魅力度向上、Aバック諸室の整備充実、B長周期地震動対策を実施している。
 @共用空間の魅力度向上については、車寄せや食堂の改修を行っている。車寄せは間接照明とグレアレス照明による光環境等により魅力ある空間に変わるだけでなく、ウエルカムスタッフサービスを付加しメインエントランス化を図っている。食堂は「みんなが集まる大樹」をコンセプトに四季を感じさせる仕掛けや、多様な働き方に対応する各種什器が配されている。Aバック諸室の整備充実について積極的なリニューアルが行われている。運営管理スタッフの事務室、休憩室、仮眠室など十分なスペースの確保に留まらず、照明デザインを含むインテリアデザインの質の高さに大いに感心させられた。ワークプレイスとしての快適性にまで踏み込んだバック諸室の改修は、所有者の「快適で効率的な環境で「働く人」のモチベーションを高め、企業の成長をサポートする」という考え方をビル管理スタッフ側まで拡大したもので、ビル管理に携わる人たち重視の姿勢を強く感じさせ、彼らのモチベーション向上と共に、より優れたビル管理の継続・発展が期待される。
 B長周期地震動対策については、TMD(Tuned Mass Damper:吊架された各300tの錘と超大型ダンパーで構成された6つの制振装置が揺れのエネルギーを吸収・拡散する)と低層階の高性能オイルダンパーによる制震改修を行っている。揺れの振幅を1/2に、継続時間を1/6にするなど安全性を向上させており、昨年11月の福島県沖地震(新宿震度3)では、改修前と比較して平均応答が概ね半減するなど想定通りの効果であることが確認されている。また屋上にTMDを配置しその組立・施工も外部から行うことでテナントやビル運営への影響を最小限に抑え、眺望の阻害にもなる窓際への制震ブレースがない執務空間としても優れた計画となっている。
 その他、万全な維持保全実施体制や、維持保全実施経過・計画を見ても優れた建築を、しっかりと長く使い続けるとの意思が、明確に示されている。築44年を経過してもみじんの古さも感じさせないことは評価を超え驚きである。また現地審査の際、直近の改修のため今回の選考対象にはならなかったがキャンパスオフィス等のエントランスロビーの更なる機能付加改修も完了していた。将来にわたり新宿三井ビルディングが成長し続けることを明示している。

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