第27回BELCA賞ベストリフォーム部門表彰建物 |
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群馬県立歴史博物館 |
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所在地 |
群馬県高崎市綿貫町992-1 |
竣工 |
1979年(昭和54年) |
改修年 |
2016年(平成28年) |
建物用途 |
博物館 |
建物所有者 |
群馬県 |
改修設計者 |
鞄本設計 |
改修施工者 |
佐田建設梶A神宮工業梶A昭和建業梶A褐Q電、門倉電機梶A潟с}ト、金井興業梶A藤田エンジニアリング梶A樺O青社 |
県立公園「群馬の森」の緑に包まれた群馬県立歴史博物館は、大高正人の代表作で、1979年の竣工以来、毎日芸術賞、BCS賞を受賞するなど各方面から高い評価を得ている。隣接する磯崎新設計の県立近代美術館と鮮やかな対比をなして佇み、上州の風土に永く生きることをめざした博物館として県民に愛されてきた施設である。 2011年8月、企画展示室のケース内の展示資料に結露水が滴下する事故が発生し、文化庁の公開承認施設の登録が取り消された。それを受け、同登録の再取得に向けた保存環境の再構築のために改修を行うという明確なビジョンのもと、計画、工事がなされ、2016年に竣工、リニューアルオープンに至っている。 既存の植樹を極力保全し、特徴的な意匠(特に外観)を継承することを基本方針としながら、ハード、ソフトの両面にわたる大幅な改修は、検討・実施の幅広さと入念さにおいて類を見ないと言えるほどで徹底し、現代の博物館として理想的な改修となっている。 温湿度環境が不安定であったエントランスロビーが、屋根面の断熱強化、大開口の単板ガラスをLow-Eガラスに置換、床吹き出し空調の採用により環境の安定と省エネを達成しているのを一例に、建物全体にわたり基本性能の向上が図られている。 展示室、収蔵室の空調は準恒温恒湿システムに更新され、収蔵室のすべてに前室を設置、二重の床壁による6面不透湿構造、前面100%オープン方式のエアタイト展示ケースの導入等により、安定した温湿度環境の下での保管・展示と安全な展示作業が可能となっている。対象室の温湿度は無線センサーにより学芸員事務所で常時監視されており、展示品保存に対する環境維持の意識は非常に高い。 また、中庭に面する軒下を内部空間化して回遊動線を新設することで、展示室レイアウトを大きく変更し、企画展示室の拡充、近年注目されている「東国古墳文化」にテーマを絞った展示空間の新設が可能となり、鑑賞の魅力向上に寄与している。同時にシアター座席配置を変更して、管理者用の回遊動線を確保し、運営の効率化が図られている。さらに搬入スペースの拡充、実質的な収蔵量の増加など、今後の長期運用に即した見直しもなされている。2016年には長期修繕計画が立案されるとともに、運営面についても外部検討委員会の意見をもとに20〜30年に渡る整備が策定されている。 こうした全過程において終始、所有者、使用・管理者、設計者、施工者の総員が、外部の専門的な指導を受けつつ、高いモチベーションと熱意をもって計画に参加し、検討を重ね、合意を形成しつつ、着実に進行させてきたことは、プロジェクト成功の要諦に違いなく、真に敬意を表するものである。 |
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