第26回BELCA賞ベストリフォーム部門表彰建物 |
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日本生命保険相互会社南館 |
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所在地 |
大阪府大阪市中央区今橋3-6-12 |
竣工 |
1959年(昭和34年) |
改修年 |
2015年(平成27年) |
建物用途 |
事務所 |
建物所有者 |
日本生命保険相互会社 |
改修設計者 |
椛蝸ム組、三機工業 |
改修施工者 |
椛蝸ム組、三機工業 |
日本生命が本社を置く大阪の淀屋橋地区の日本生命本店ビル群4館(本館、南館、東館、新南館)の内、「南館の改修」が対象である。大阪のメインストリートである御堂筋沿いの本館の隣に位置している。本館(北半分1938年竣工)は、過去にBELCA賞(ロングライフ部門)を受賞している。南館は第1回(1960年)BCS賞を受賞した建築で、タイル貼・横長の開口部による端正なファサードであったが、築50年を超えた今回の改修で歴史・伝統・文化の象徴である「本館ビルのファサード」を継承し、時代に流されない風格のあるビルへ刷新すると共に日本生命本店ビル群としての一体感のある街並をつくり、御堂筋沿いの景観を再整備している。 継承するデザインとして@材質、A3層構成、Bプロポーション、Cディテールの4つを掲げている。1つ目の「材質」は既存のタイルから本館に類似した花崗岩として東館でも採用された石種(色の濃淡による4種類)とし、外壁の耐荷重の制約や敷地境界線までの距離が限られていたため、石厚を抑えた乾式工法としている。2つ目の「3層構成」については石の表面加工(基壇の「ノミ切り」、中層の「江戸切り」、頂部の「荒摺り」)と基壇部・中層・頂部を分ける「帯」で本館と合わせている。3つ目の「プロポーション」すなわち石の割り付けや窓の形状が一番の課題であった。当時の御堂筋沿いは建物高さが31mに抑えられていたため、本館、南館とも高さは同じだが、南館は床面積確保のため本館より2フロア多いことに加え、当然のことながら既存の窓を活かさなければならない。壁面量を調整して両サイドの窓幅を3/4閉鎖し、横長窓にピラー(石柱)を設置することなどによって縦長窓の本館と調和を図っている。4つ目の「ディテール」は、パラペット部、帯部、窓廻り、コーナー部といった各部を、石の表面加工の違いやくり型などの細かな意匠により多様な表情や陰影による彫りの深い仕上がりとしている。本館と調和のとれたファサードはBIMや原寸模型による数多くの検討によって実現したのだと思う。 内部は執務空間の拡張(EVホールの一部を事務室化)、OAフロア化かつ既存天井高さの確保などオフィス機能の向上を図っている。BCP対応として受変電設備、非常用発電設備等を地下階から地上に配置変更することで、浸水対策と電源確保により本店としての機能を継続可能としている。環境への配慮としては、空調熱源の高効率化や個別空調の導入、LED照明の採用、執務空間の熱負荷軽減等で、エネルギー使用量を50%削減している。 御堂筋の景観は大阪の誇りであり、都市の格を高めているが、高さ制限の緩和や壁面線の制約の変遷によって、スカイラインや壁面の位置の統一性がなくなってきていることが残念である。その中で日本生命本店ビル群は一体感のある景観を形成し、御堂筋沿いは高さ31mで統一したまま、風格ある街並みの創出に貢献している。イチョウ並木と質の高い建築群の連続する「御堂筋の都市美」が継承されていくことを期待する。 |
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