第26回BELCA賞ベストリフォーム部門表彰建物 |
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長浜市庁舎 |
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所在地 |
滋賀県長浜市八幡東町632 |
竣工 |
1986年(昭和61年) |
改修年 |
2014年(平成26年) |
建物用途 |
[改修前] 病院 [改修後] 市庁舎 |
建物所有者 |
長浜市 |
改修設計者 |
鞄本設計 |
改修施工者 |
潟tジタ、轄゙光工務店 |
長浜市の旧庁舎は耐震性能の不足、建物の狭隘・分散、バリアフリーへの対応などの課題を抱えており、市民の利便性やサービス機能は低下し、行政運営にも支障をきたしていた。 「長浜市本庁舎整備基本構想」(2010 年)において、財政負担の削減や災害の危険の早期解消を図るため「ゼロから新しい庁舎を建てるという視点ではなく、東別館を活用するかたち」が、取組方針として掲げられた。東別館とは旧市民病院の建物(昭和61年竣工)である。 この取組方針に従い、新しい長浜市庁舎は旧市民病院の建物を改修した部分(西館)と、新たに増築した部分(東館)で構成されている。 西館のもとの建物は、鉄骨造純ラーメン構造で新耐震基準による設計が行われていた。本改修では現行基準に適合し、かつ新築の東館と同等の耐震性能(構造安全性T類、重要度係数1.5)を確保するための補強をしている。具体的には、外装材の変更(プレキャストコンクリート板から押出成形セメント板)や塔屋などの減築による建物重量の軽量化、鉄骨柱のSRC化、制振ブレース・間柱の設置を行なっている。 また純ラーメン構造であったことから、外壁のプレキャストコンクリート板を取り外すことによって「柱、梁、スラブだけのシンプルな骨組み」(1つの階段は継続利用)をベースに計画できたことが外観デザインやプランニングの面での自由度を高めている。 外観は、改修部と新築部の階高を合わせ、黒に近い色のグレーチング庇や外装(押出成形セメント板とサッシュ)で統一されている。既存躯体の制約から2棟の空調方式が違うため、改修部は窓の上にガラリが設置されているが目立たない。逆に細部の違いや2棟間のスリットが全体ヴォリュームの中で適度なアクセントになっていると感じた。 プランニングは明快で、議場や市民交流ロビーなどの大空間、主な設備室、エレベーターは新築部に配置し、改修部に負担をかけない計画になっている。改修部は、既存の中庭の活用と減築により3つの内部吹抜け空間を設け、建物中央部への自然採光を確保している。その他にも2棟間には水盤の中庭を設けるなど、既存の構造体の特徴や2棟の構成を積極的に活かしたものになっている。 設備面では、防災対策本部機能としてのインフラの多重化によるBCP対策を実施している。自家発電機設備による非常時の電力供給、既存施設を利用した給排水設備の二重化、ガスの非常時供給用バルブの設置、無線防災塔の設置が行われている。 環境配慮に関しては、庇の設置とLow-eガラスの採用よる空調負荷の低減、内部吹抜けによる自然通風利用(気流シミュレーションも実施)の他、地下水熱利用、屋上緑化と散水の中水利用、太陽光発電設備、LED照明、BEMSによる照明制御など様々な手法を取り入れている。 既存ストック(躯体)を活かすことで、建設コストにおいて西館の工事費を約15%削減するとともに、防災安全、市民サービス、執務環境、環境配慮、景観形成などにおいても新築と同じ水準のプラスアルファを確保した手法は、庁舎のみならず、さまざまな用途においても参考になる良い事例である。 |
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