24回BELCA賞ベストリフォーム部門表彰建物

製粉ミュージアム本館

所在地

群馬県館林市栄町6-1

竣工

1910年(明治43年)

改修年

2012年(平成24年)

建物用途

[改修前] 展示施設(記念館)
[改修後] 展示施設(ミュージアム)

建物所有者

鞄清製粉グループ本社

改修設計者

清水建設梶A潟gータルメディア開発研究所、潟tィールドフォー・デザインオフィス

改修施工者

清水建設梶A潟gータルメディア開発研究所

JR館林駅西口に降りると駅前広場に面して製粉ミュージアムの敷地がある。駅前ロータリーはミュージアムの前庭としては良い状態ではなく、またアプローチも引きがない。この場所に新たにミュージアムを建設するとしたら全く別の解答があると思う。
 しかしながら、この建物は単に製粉にまつわる歴史や技術を紹介するための施設ではない。日清製粉グループの歴史と創業者の精神を伝える場としての意味を持つ。グループにとって館林は創業の地であり、本館は唯一現存する創業時の建物であった。当初の姿を可能な限り保存するために多くの手間と時間がかけられている。
 継続使用に耐震改修は必須であった。もとの配置のままに木造基礎免震レトロフィットを実現するため、2度曳家している。重量のあるRC免震構造の基礎(人工地盤)上に軽量な木造建築物を設置することで、構造的な解決を図り、お陰で意匠を変えるような改修は不要になった。外壁の塗装や内部の漆喰、石膏レリーフなど仕上げに関しては入念な調査のもと、経年の風合いを生かした保存改修が行われている。
 一方、来館者のためにバリアフリー化の改修も行われた。エレベーターを外付けで新設している。新館からの見え方には配慮された位置となっているが、日本庭園や休憩室に対する圧迫感軽減には工夫の余地がある。
 設備については、企業の歴史と創業者精神を伝える展示施設として、建物の雰囲気を損なわない改修を基本としている。照明器具は清掃、点検の上再利用し創建当初の佇まいを保持しており、また、冷暖房設備では壁・天井仕上げを傷めないように床置エアコンを各室に新設、展示施設と同材の家具にて囲いを制作し、目立たないように配慮されている。冷媒配管は免震ピット経由で屋内機、屋外機の接続を実施し、電気設備における幹線・動力設備では屋外キュービクルより免震ピットを経由して低圧受電する等、免震化対応を実現している。設備・防災については、非常放送設備、自動火災報知設備を自主設置する等、中央監視体制とともに企業文化遺産をしっかりと守る設備改修となっている。
 維持管理においては、所有者、維持管理者を中心とした実施体制の下で、今後25年間の整備計画を策定し、万全の維持管理体制が構築されている。
 細部にわたり関係者の熱意と愛情が伝わる施設であり、駅前広場の整備と併せてさらに魅力的なミュージアムとなってゆくことを期待している。

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