24回BELCA賞ベストリフォーム部門表彰建物

JPタワー

所在地

東京都千代田区丸の内2-7-2

竣工

1931年(昭和6年)

改修年

2012年(平成24年)

建物用途

[改修前] 郵便局
[改修後] 郵便局、ミュージアム、店舗、ホール・カンファレンス

建物所有者

日本郵便梶A東日本旅客鉄道梶A三菱地所

改修設計者

且O菱地所設計、JAHN、隈研吾建築都市設計事務所、内原智史デザイン事務所、PLACEMEDIA、FisherMarantzStone、日本郵政梶A東京大学総合研究博物館、樺O青社

改修施工者

大成建設梶Aダイダン梶A第一工業梶A日比谷総合設備梶A大成設備梶A葛纉d工、
鰍ォんでん、東光電気工事梶A滑ヨ電工

1934年竣工の東京中央郵便局庁舎は、時代の変遷につれ郵便事業も変革の渦中にあり、郵政民営化を契機とした一号開発案件として再開発が企画され、当該施設も高い収益性を持ち、東京駅周辺を国際ビジネスセンターとして発展させる計画が求められた。東京駅前広場にある日本の顔の一つでもある既存庁舎は昔からの景観保存を望む声に応え、さらに工事中に出された国の要望による保存エリア拡大も含め、駅前に面した150mの外壁の大部分を保存・復元し、駅前広場を囲む歴史的な景観を継承し、その低層部には商業や文化施設、防災広場となるアトリウムなど都市の求める複合機能を実現した。保存棟北東面は敷地内での免震層構築ができないため、接する北面との接点を起点とした、過去に例を見ない8,400トンの回転曳家工事を行っている。
 外観は既存タイルの一部再利用とともに、弾性接着剤を併用した機械固定により安全性を高めたタイル張り工法にて再生している。内部はアトリウム空間に商業施設が配置された回廊型プランとなり、既存庁舎の構造が断面図的にその姿を見せる、新たな保存活用の表現方法の提案が為された。既存庁舎の郵便局部分では、公衆室 (窓口ロビー)や局長室などの重要部分の復元を行うことで、歴史的価値を保存公開し利用している。
 躯体は国内初期の鉄筋コンクリート造であり、施工不良部分も多く存在した。さらにコンクリートの中性化が顕著であったため、不良部分の除去と高強度モルタルでの補修やコンクリートの再アルカリ化工法など、様々な手法を用いた改修を行い耐震補強の確実性とともに健全な復元・保存を実現した。保存建物部分は地下階での中間層免震構造のレトロフィットを行い、耐震壁などの新たな構造要素を最小限としながら原設計に近い形を維持した。さらに1階床レベルは当時の断面計画から高い位置に設けられていたものを、床下免震層構築の際に地表面と同レベルまで下げることでバリアフリー化を行っている。
 保存建物で囲い込むように構成したアトリウム空間は、自然界の3要素を活用する省エネ環境負荷低減のテーマが特徴となる。「光」はトップライトに太陽光発電パネルを組み込んだ昼間の照明電力削減であり、「風」は自動制御の窓を用いた中間期の自然換気、「水」は地下水の熱エネルギーを活用した床輻射冷暖房など、既存再生と自然エネルギーを活用した空間づくりがプロジェクトの付加価値を高めている。またアトリウムの店舗エリアは保存建物のスケルトンを生かしたデザインに空調電気設備等をメカニカルな表現で挿入しているが、違和感も無く維持管理のしやすい計画である。
 公共性が高く賑わいを生む商業をベースとした地域貢献施設の「KITTE」は、開業以来連日多くの人々が詰掛けている。1934年から東京駅とともに80年続く駅前広場景観を継承し、駅前広場から繋がる都市の賑わいを育む複合機能型商業ゾーンとして、時代の求める新しい役割への転換に応えている。長期使用に向けた改修とともに企画された長寿命化が遺憾なく発揮されたプロジェクトである。

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