第23回BELCA賞ベストリフォーム部門表彰建物 |
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東京理科大学神楽坂キャンパス |
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所在地 |
東京都新宿区神楽坂1-3 |
竣工 |
1956〜1981年(昭和31〜56年) |
改修年 |
2008〜2012年(平成20〜24年) |
建物用途 |
大学 |
建物所有者 |
学校法人 東京理科大学 |
改修設計者 |
樺|中工務店 |
改修施工者 |
樺|中工務店、TAKイーヴァック、東洋熱工業梶A斎久工業 |
東京理科大学神楽坂キャンパスは、1906年(明治39年)に小川町から移転以来、100年以上に渡り、街と共に発展し、現在、大学、大学院の学生数約7,000人の規模を有している。しかし、増築を繰り返してきたキャンパスの各棟は築32〜57年を経過しており、様々な問題点を抱えていた。各棟への機能配置の偏りによる学生の集中や統一性に欠けた建物デザイン、フェンス・塀・段差による周辺への閉鎖性と弱者への障害、安全上問題となる実験機器の外部露出配管、建物・設備の老朽化である。これらを「キャンパスの一体感の創出」「キャンパスと街の融合」「教育環境の再整備」「省エネルギーの推進と環境配慮」「継続的な改修における施工品質の確保」という改修方針を立て、リニューアルに臨んだ。 まず、各棟の用途を見直し、特に共用エリア(自習ラウンジ、食堂、大教室、生協、学生課等)を各棟低層部に分散配置し、キャンパス全体の一体的利用を図り、サインも棟毎にテーマカラーを決めキャンパス内での居場所のわかり易さを向上させている。外堀通りに面した外観は、工作物付加による建物高さ統一と一体壁面の形成、窓フレームを追加した防音二重サッシ(7号館)と意匠を合わせた窓フレーム付加(1,9号館)による横連窓イメージの創出と白黒ストライプ着彩による壁面デザインの統一により、外堀通りやJRの車窓、飯田橋駅などの周辺施設からも一体として認識される「キャンパスの顔」となっている。また、その足元はフェンスを撤去して、外堀通り沿いに奥行12m、全長120mのボーダーレスな芝生広場となり、小栗通り側は坂の多い神楽坂の石垣や石畳を踏襲し、引きのある壇状緑地を形成し、神楽坂とキャンパスを自然に結び付ける通りぬけ通路の確保など、街と連続して人を引き込む仕掛けが随所に見られる。 外部に露出していた実験機器の配管は、葛飾キャンパスの移転により、実験系特別教室から、講義用多目的教室への転換が図られ、校舎の風格の復活と、豊かな緑地の形成につながっている。耐震補強は主に妻壁、廊下壁の耐震補強を中心に教室採光を確保して行われ、応答解析を用いた日本最初の免震建物と言われる1号館は、サイト波を用いた時刻歴応答解析により耐震安全性を確認している。 建築設備は省エネルギーを目的として全面リニューアルし、各教室のPAC型空調機を高効率ヒートポンプエアコンへ更新し、また、衛生器具は節水型器具に更新して、使用水量削減を図り、照明設備は教室、ゼミ室、事務室等のFLR蛍光灯をHf蛍光灯に更新して、使用電力量を大幅に削減した。また、その使用電力量を2号館、9号館にて表示し、学生に環境への配慮を促している。環境配慮型キャンパス実現へ伴い、学生カードによる出欠チェックや夜間入退室のセキュリティー管理、最新AV機能やLANなど安全・情報の設備も整備拡充した。 既存校舎を利用しつつ、年度毎に1〜3棟(4,000〜12,000u)をほぼ半年で改修する工事を4年に渡り実施した施工も高く評価したい。 |
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