第23回BELCA賞ベストリフォーム部門表彰建物 |
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つるぎ町立半田小学校管理教室棟 |
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所在地 |
徳島県美馬郡つるぎ町半田字田井289 |
竣工 |
1970年(昭和45年) |
改修年 |
2012年(平成24年) |
建物用途 |
小学校 |
建物所有者 |
つるぎ町 |
改修設計者 |
多田善昭建築設計事務所、竃x江建築工学研究所、潟Aークテクノ |
改修施工者 |
鰹シ考建設、三笠電機 |
四国の山に抱かれた小学校の改修工事である。約40年前に建設された標準的な鉄筋コンクリート造校舎を、地域に馴染むような形に見事にリノベーションしている。 児童数の減少や校区の変更、家庭科教室やコンピュータ室などの機能的要求の変化に対応することは勿論であるが、建築そのものを新たな作品のレベルにリフォームしていることは、設計者の力量もさることながら、児童を含めた学校関係者などの熱意の結果であろう。 特筆すべきは、置屋根の採用である。防水層の維持管理が問題となるRC造の陸屋根に屋根を掛けることは、躯体の保護や熱環境の改善など、様々な効果が期待されるが、近代建築の呪縛なのか、実現している例はそれほど多くはないのではないか。この改修では、鉄骨の小屋組みを掛けることにより、そのような性能面の向上だけでなく、無味乾燥で全国どこにでもあるようなRC造の校舎を、地域に相応しい形態によみがえらせている。最上階で雨漏りがみられた現実が、このような改修を促進させたのであろうが、棟換気による遮熱効果は室内環境の改善に役立つであろう。 壁面に関しても、北面を除き、木下地の杉板で覆い、躯体の保護と熱環境の改善を図っている。鉄骨で付加された南面のバルコニーも、日射遮蔽と外観の一新に大きく寄与している。BELCA賞の目指すところに総合的にアプローチし、限られたコストの範囲で成功している好例といえよう。内装に関しても、杉板を効果的に用いているが、教室と廊下の境の間仕切りなどは、既存のものを最大限活かしている。古いものを大切に使いながら、現在の要求に対応させようとする、費用対効果の高いリフォームである。 耐震改修は、南面の開口部への袖壁付加、耐震壁の増設、北面の腰壁撤去とポツ窓をもつ耐震壁の増設などにより、後付ブレースなどとは異なる、すっきりとした補強となっている。 設備に関しては、学校建築であるため、高度なものではないが、メンテナンスの行い易い形に、全面的に更新されている。限られた予算の中で、中長期計画を作成し、設備改修に関しても、優先順位を定めて実施している。浄化槽の集中化や、対応すべき教室を絞った高効率省エネ機器への改修など、苦心の跡が見られるリフォームである。 維持管理に関しては、所有者のつるぎ町と維持管理者のつるぎ町教育委員会が、保守管理会社とともに、小学校の教職員やPTA、地元の専門施工会社と一体となって進めようとしている。設計会社、施工会社の協力を仰ぎ、年度ごとの予算や補助金を考慮し、中長期修繕計画を作成し維持管理を推進している様は、まるで町が一体となり「学び舎」を守り保全しているようである。 贅沢なリフォームではなく、既存のものを大切にしつつ、どこに手を入れれば効果的であるかを見極め、標準的な鉄筋コンクリート造の校舎を優れた建築に蘇らせたこの作品は、今後の既存建築ストックの活用に、おおいに参考になるに違いない。 |
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