23回BELCA賞ベストリフォーム部門表彰建物

裏磐梯高原ホテル

所在地

福島県耶麻郡北塩原村大字桧原字湯平山1171

竣工

1983(昭和58年)

改修年

2012(平成24年)

建物用途

ホテル

建物所有者

潟Aサヒプロパティズ

改修設計者

樺|中工務店

改修施工者

樺|中工務店

裏磐梯高原ホテルは1958年創業のリゾートホテルである。1983年建替えられた現在の建物は、ウッドシングル葺きの外壁と切妻屋根のデザインが周辺環境に溶け込み、磐梯朝日国立自然公園内の建築許可基準のモデルとなった建物である。建設から30年の歳月を経て、ウッドシングル葺きの外観は風合いを増してより一層自然環境と調和し馴染んでいる。

今回の改修では、施設の陳腐化・老朽化対策として内部諸室の改修を行って

いるが、外観は変えることなくウッドシングルなどの朽ちた部分の補修にとどめ、増築した温浴棟も最小限とし景観を壊さない配慮がされている。改修した

内部空間は細心の配慮のもと、和室であった宿泊室の半分を洋室として磐梯山への眺望をより活かす形に変え、2階和室大広間を椅子席のメインダイニングルームに、浴場は積雪のある冬季も弥六沼の自然環境が楽しめる温浴棟として増築し、もともとの大浴場はパーテイや研修に使える多目的室に改修されている。

工事期間中もリゾート地の景観を壊さない配慮がなされており、資材や作業車両を木目調の仮囲いで囲って施工が行われている。 

設備計画においては、寒冷地のホテルで課題となる温熱源の大量消費への対応として、外断熱外壁と輻射式温水パネルヒータの併用による負荷低減、高効率ボイラへの更新による対策が講じられている。更には、温泉掘削により熱の有効利用により劇的なエネルギー(重油)の削減も実現しており、照明のLED化も相まって、省エネ性能に優れたホテルに生まれ変わっていると言える。改修後の年間の一次エネルギー換算消費原単位も1,129MJ/u・年であり一般的なホテルと比較しても非常に少ない値でありかつ、改修前と比較しても20%のエネルギー削減が実現できている。

維持管理においては、帳票類の整理・保管はもとより写真を用いた管理マニュアルが整備され万全の管理体制が構築されている。ホテルという用途からのソフト面での対応を含めて、総体的に当初の改修目的は適切に実現されている。

ただ、魅力ある段差を利用した空間構成については、併せてバリアフリー対策の積極的工夫配慮があればハード面でもホスピタリテイがより向上したのではないかと思われる。

当初の設計のテイストを守りつつ、現代ニーズに対応した事業企画並びにそれを具現化した設計・施工は、建物の価値を維持しつつ建物寿命を長らえさせていくに成功し、また建物だけでなく地域環境・景観を含めて維持されている。スクラップアンドビルドではなく、景観を保全しつつ長寿命化を進めいく地域づくりへの貢献として高く評価でき、賞に値するものである。

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