28回BELCA賞選考総評

BELCA賞選考委員会委員長  内田祥哉

BELCA賞は、良好な建築ストックが、現代社会の中で生き生きと活用されることを目的に設けられた賞である。賞を2部門に分け、長年にわたり適切に維持保全され、今後も長期保全の計画がある模範的な建築物をロングライフ部門、社会の変化に対応したリフォームにより、見事に蘇生した建築物をベストリフォーム部門として表彰し、平成3年から昨年まで、表彰件数は266件を数えている。
 BELCA賞への関心は年とともに高まりつつあるが、現代社会の中での活用には、ロングライフ部門でも設備の抜本的現代化が必要であり、逆にベストリフォーム部門では建築長寿命化に伴い、利用者達の建築物への愛着が増し、それを重んじる傾向を深めている。そこで近年は、両部門の件数をあらかじめ定めず、合わせて10件を選考することにしているが、たまたま本年はロングライフ部門5件、ベストリフォーム部門 5件となった。
 今回表彰されるロングライフ部門では、
 ・時代に即したハイスペック化を構築し、築50周年を迎えた日本初の超高層ビル
 ・5年ごとの改修項目のリスト化を構築した、我が国最初のワインヤード型コンサートホール
 ・竣工当初からの、地域に開かれた公開空地と軒下空間のあり方を再考した地方銀行本店
 ・古典的と言われる外観を保ちながら、知的生産性を向上させた建設会社ビル
 ・元設計を生かすために、五種類の免震改修を駆使した情報発信拠点
が入選した。
 また、ベストリフォーム部門では、
 ・展示ケース同士の映り込み防止に工夫を凝らした美術館
 ・所有者、設計者、施工者が一体となって維持保全計画を策定した国宝殿
 ・創建当時の姿を守るために議論を重ね、登録有形文化財を守る意識を共有している町庁舎
 ・展示内容の刷新とともに、排水量とエネルギー量の削減に成功した水族館
 ・免震レトロフィットや設備の全面更新を行ない、外装を丁寧に保存したイタリアルネサンス様式のビル
が入選した。
 これらの建築物をみると、ロングライフ部門では竣工後30年をわずかに超えたものがあるのに対して、ベストリフォーム部門では90年近いものもあり、建築年齢上からも両部門を区別するのは難しくなった。
 また今回は、初めて山梨県の建築物が入選し、未だ受賞建築物を持たない地域は6県になっている。更なる全国的普及を目指す賞の趣旨から、未受賞の地域からの応募を切に期待したい。
 応募作品の水準が年ごとに高まっていることは、昨年以上に感じられるが、惜しくも選に漏れた建築物については、更に充実した内容で再度の応募を期待したい。


第28回BELCA賞に戻る

BELCA賞トップに戻る