今回・第26回のBELCA賞の総応募件数は、部会制による選考を廃止し、ひとつの委員会にて両部門の選考を行うなどと選考規定を改定した2001年度・第11回以来の平均件数を1割ほど上回った。ただし、ロングライフ部門の表彰件数は、前回の7件から、第11回以来の平均件数とほぼ等しい4件に減少した。表彰に値するとして選定された建物の用途は、迎賓館、教会(聖堂)、総合体育館、複合用途建物(物販店舗・飲食店舗・事務所)と、きわめて多岐にわたる。
表彰案件4件は、@主要な部屋はすべて南向きとし、大きな開口部から冬は日光を取り入れ、夏は南北に風通しを良くするなど、環境に十分配慮した設計思想のもと、開口部に緻密なデザインと開閉操作上の工夫を施し、階段室の高窓などは遠隔操作で開閉可能とする、和室の片引き窓では、片引きしたあと外開き可能とし、窓の引き残しを感じさせないなど、現地審査を行なった委員全員を感動させ、また、改修工事に際し、“オリジナルの姿に戻すと共に、長期に使い続ける”とした基本方針が忠実に守られ、庭の手入れも見事であった、昭和初期に拡がり始めた和室と洋室が組み合わされた邸宅建築を迎賓館とした「石橋迎賓館」、A鉄骨鉄筋コンクリート造を主構造とし、大空間を有するにもかかわらず、Is値0.6以上で、特段の耐震補強が必要なく、常に信徒の方々の協力による適切な維持・管理が行われ、さらにはステンドグラスの増設による意匠面での改良、スロープとエレベーターと多目的トイレを納めた違和感のないエレベーター棟増築によるバリアフリー化などを行い、1961年の創建以来、2万組を超える結婚式が執り行われるなど、地元住民の親しみと憧れの対象となっている「カトリック布池教会」、B敷地が植物公園ということから課せられた厳しい高さ制限や建蔽率を逆手にとり、地中埋設建物とし、屋上を植栽で緑化、公園の中のおおらかな起伏の一部となるようデザインされ、地中埋設による冷暖房負荷の低減、自然採光、自然通風、熱源機器の排熱利用等、積極的な省エネルギーにチャレンジし、環境建築の先駆的な存在である1985年竣工の「調布市総合体育館」、C敷地が接する道路に面し、竣工後隣接して建つであろう建物形状・色彩を検討し、原設計で取り入れられたブルータイルの外壁、中庭を取り囲む建物の構成が、地域のランドマークとして認知されるに至った建物を、解体も考えられた中で使い続けることを決断し、見事な改修を行った「ヨックモック青山本店」であり、すべて『幸せな建築』そのものと言える。
ただ、@では、“今後一般社会への開放に、さらに積極的に取り組まれることを期待する”、Aでは、“無造作に設置された空調用屋外機器が気になる”、Bでは、“当初の設計コンセプトどおり運用されていないところが生じているようである”、Cでは、“局所段差や多目的トイレの不在など、バリアフリーに関する現在の基準から見て課題が残る部分がある”などの指摘があったことを記しておきたい。
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