BELCA賞は、良好な建築ストックが、現代社会の中で生き生きと活用されることを目的に設けられた賞で ある。賞を2部門に分け、長年にわたり適切に維持保全され、今後も、永く維持保全される計画がある模範的な建築物をロングライフ部門、社会の変化に対応したリフォームにより、見事に蘇生した建築物をベストリフォーム部門とし、平成3年から昨年まで、表彰件数は226件を数えている。
BELCA賞への関心は、昨今、年々高まりつつあるが、現代社会の中で活用されるためには、ロングライフ部門でも設備の抜本的現代化が必要であるのに対し、ベストリフォーム部門では利用者達の建物への愛着を重んずる傾向が増している。そのため近年は、両部門の件数をあらかじめ定めず、合わせて10件を選考することにしている。そこで本年はロングライフ部門3件、ベストリフォーム部門7件となった。
今回表彰されるロングライフ部門では、阪神淡路の地震にも耐えて使い続けられているオフィスビル、地域に愛されてきた町役場、創建当時の卓越した設計と施工技術の保存に注意を払った教会など、何れも過去に名作として評価の高かったものや、文化財として価値あるものだが、保存改修の方針を自らの意志で考えようとしていることが注目される。
ベストリフォーム部門では、明治、大正以来、東京駅広場の景観に馴染まれてきた鉄道、逓信の二つの建物が選ばれたが、何れも戦火と長年の利用による傷みが激しく、傷の補修、復元の技術に高く評価されるところがあった。これらに加え、浅草の私鉄駅も嘗てのランドマークであった姿を蘇らせており、社史に残る記念建築では可能な限り保存するために多くの手間と時間がかけられている。ベストリフォームとはいえ、いずれも保存に対する真剣な配慮がひしひしと感じられた。それらに対し、空港建築では、発展する交通拠点の利用に対する快適性を、部分的改造でみごとに蘇生させており、また、街の中心の賑わいを取り戻すために、百貨店を美術館に改造した建物は、その導線と外観に之までにない斬新感を作り出している。最後に、今回も地方都市のささやかな小規模建築作品が注目された。遊泳プールの形をそのまま改造した図書館は、図書館建築の構想からでは発想しがたい様々な和やかな空間を、おしゃべり図書館として実現させ、選考委員に強く注目された。
これらの建築物をみると、応募作品の水準は年ごとに高まっており、惜しくも選に漏れた建築物も多かったので、それらについては再度の応募を期待したい。
BELCA賞の周知の範囲は次第に広まってきた。しかし、未だ受賞建築物のない県が9県あり、建築物の維持保全技術の全国的普及を目指す賞の趣旨から、未受賞の地域からの応募も切に期待したい。
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