24回BELCA賞ベストリフォーム部門選考講評

 BELCA賞選考委員会副委員長 深尾 精一

ベストリフォーム部門は、年を追うごとにレベルが高くなってきているが、今回応募された建築にも、様々な意欲的な試みがなされているものが多かった。ストック活用型社会に向けて、当然の動きと言えよう。また、応募された建築の用途・規模・構造等も多種多様になっている。結果として、前回同様、表彰された10件のうち、7件がベストリフォーム部門ということになった。
今回は、大きな駅舎が2件同時に選ばれたことが、ひとつの特徴であろう。乗降客をはじめとする不特定多数の利用者がいる建築を、その機能を止めることなく改修工事を行うということは、並大抵のことではない。そして、その二つとも、当初の形に戻すことが狙いのひとつになっており、ロングライフ部門にも値する建築といってよいであろう。そのひとつは東京駅丸の内駅舎である。2014年、開業百年にあたる年に現地審査が行われたわけであるが、建築界のみならず、社会に広くその改修工事が話題になったことは、BELCA賞が目指している建築ストック活用の意義が一般の方々にも共感をもっていただくようになったという意味でも、素晴らしいことであった。今一つの駅舎は、EKIMISE(エキミセ)−東武鉄道浅草駅舎−である。百貨店併設の昭和初期の駅舎は、約40年前に現代的なファサードに改修されていたが、耐震改修とテナントの入れ替わりに合わせて、当初の様式に戻されている。耐震補強の手法もユニークであるが、建物の中に線路・プラットフォームが組み込まれており、深夜の限られた時間帯に行われた改修工事の進め方は、特筆すべきである。この、一般の方々が気づかないようなリフォームの部分も、高く評価された。
阿蘇くまもと空港国内線ターミナルも、運輸機関を稼働させながらの改修工事という点では、駅舎と類似している。ただ、こちらは、あまり特徴のない現代の建築を、県産材の木材を多用することなどにより、建築としての価値を飛躍的に高めるというリフォームが行われている。BELCA賞ベストリフォーム部門の目指すところに合致したデザインであり、二つの駅舎とは対照的であった。
交通機関のための建築ではない他の選定された4件も、もともと価値の高い建築を、今後も継続して用いていくための改修を行ったものが2件、そして、当初の建物の建築的価値はそれほど高いとは言えないものを、リフォームによって見事に生き返らせたものが2件と、バランスのとれた選定となった。
JPタワーは、東京中央郵便局という、わが国の近代建築の流れの中で、極めて価値の高い建築を、現代の機能的要求に合わせるべく、大胆にリフォームを行った事例である。その部分保存に至るプロセスは報道され、社会的関心を呼んだが、新たに生み出されたアトリウム空間に、既存の建築の断面を表現するという手法は、様々な意見があるであろうが、いままでにないリフォームの手法として特筆すべきであろう。 製粉ミュージアム本館も、会社の歴史を象徴する、価値ある木造建築であるが、重量のある鉄筋コンクリートのスラブを新たに設けることにより、免振レトロフィットの手法として新たな実績を作り上げている。これも、ロングライフ建築と言ってよいであろう。
一方、アーツ前橋と中山町立図書館ほんわ館は、改修前は建築界で話題になることはないような建築であったものに、リフォームによって新たな命を吹き込んだ、ベストリフォーム部門ならではの2件である。アーツ前橋は、多層の商業施設の一部を、公立のミュージアムにコンバージョンしたものである。展示施設は、機能的要求がそれほど複雑でないので、コンバージョンの事例は少なくないが、この建築は、エスカレーターの開口部など、既存躯体のありようを十分に咀嚼して、ベストリフォームと呼ぶにふさわしい改修を行っている。外装の付加手法も特筆すべきであろう。中山町立図書館ほんわ館は、室内温水プールとして建設された比較的新しい施設を、いままでにない形の図書館にリフォームするという計画で、これまた、流水プールの斜めの床やウォータースライダーなどの既存の構造物のありようを活かした改修であり、ベストなリフォームである。
以上のように、同列に並べて比較することが難しい、多様な応募作品を対象とした選考であったが、結果としては、バラエティーに富んだ、BELCA賞ベストリフォーム部門が対象とする現在の状況を、的確に記録することができる選定が行えたといえるであろう。

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