第23回BELCA賞選考総評 BELCA賞選考委員会委員長 内田祥哉 |
BELCA賞は、良好な建築ストックが、現代社会の中で生き生きと活用されることを目的に設けられた賞である。賞を2部門に分け、長年にわたり適切に維持保全され、今後も、永く維持保全されることが計画されている模範的な建築物をロングライフ部門、社会の変化に対応したリフォームにより、見事に蘇生した建築物をベストリフォーム部門とし、平成3年から昨年まで、表彰件数は216件を数えている。表彰は、ロングライフ部門で、所有者、設計者、施工者、維持管理者の4者、ベストリフォーム部門で、所有者、改修の設計者、施工者の3者としている。 昨今の地球環境問題にともない、BELCA賞への関心は年々高まりつつあるが、現代社会の中で活用されるためには、ロングライフ部門では設備の抜本的現代化が必要であるのに対し、ベストリフォーム部門では歴史的記憶が尊重される傾向が増している。そのため、近年は両部門の件数を分けずに、合わせて10件を選考している。従って本年はロングライフ部門3件、ベストリフォーム部門7件となった。 今回表彰されるロングライフ部門では、豊かな森と共に40年近くにわたり住まわれてきた高級賃貸マンション、緑豊かなランドスケープとシークエンスを意識した空間構成の大学キャンパス、外観の姿を変えないように伝統木造技術を用いて耐震補強工事を行った神社拝殿が選に残った。 ベストリフォーム部門では、外観と周辺環境を維持して既存の良さを活かしながら、魅力と付加価値の向上を図る改修を行なったリゾートホテル、竣工当時の資料が少ない中で、写真や現地調査により建設当時の意匠を推測しつつ明確な方針を設定して改修された大学会館、半世紀前に建てられた団地を民間事業者3者がそれぞれの住棟を借り受けて、独自の企画により再生を図ったシェアハウス・住宅・福祉等の複合施設、限られた予算の中で耐震改修や機能再生など現在の社会的要求に最大限対応させる改修を行なって、地域の活性化に寄与した小学校校舎、竣工後90年以上が経過した煉瓦造建築の書庫をレストランや会議室等にコンバージョンした大学施設、機能の向上のみならず周囲の環境との関連性を考慮した改修がなされた美術館、機能配置の偏りによる学生の集中や増築を繰り返し、統一性に欠けていた建物群に見事な統一感を与えた大学キャンパスが、選に残った。 これらの建築物をみると、名実ともに建築寿命を延ばすための新たな技術が、次々と開発され定着しつつあることが実感される。 応募作品の水準は年ごとに高まり、惜しくも選に漏れた建築物も多かったが、それらについては条件を整えて、再度の応募を期待したい。 BELCA賞も周知の範囲を広めつつあるが、今回新たに徳島県からの受賞があり、建築物の維持保全技術の全国的普及が、また一歩進んだ。未受賞の地域からの応募を切に期待したい。 |