23回BELCA賞ベストリフォーム部門選考講評

 BELCA賞選考委員会副委員長 鎌田 元康

今回のBELCA賞応募件数は、前回に比べロングライフ部門・ベストリフォーム部門とも微増したが、表彰件数は両者合わせて10件以内ということから、選考委員会で慎重審議の結果、ベストリフォーム部門は7件ということで決着した。表彰に値すると判断された物件は、この後に記載される物件ごとの選考評に示されるように、それぞれに今後のリフォームのあり方を考える上での示唆に富むものである。
 今回の表彰物件の特徴として、学校施設関係が多いことが挙げられる。ベストリフォーム部門では7件中4件を占め、ロングライフ部門の「神戸松蔭女子学院大学 六甲キャンパス」を含めると、表彰件数のちょうど半分の5件となる。しかしながら、表彰に値するとされた理由などは物件ごとにかなり異なる。
 ベストリフォーム部門での「大阪大学会館」は、“創立当初より利用されている歴史ある建物を、大学のシンボルとして再整備する”という企画のもと、竣工当初の空間の骨格の保存・意匠の保存を優先するエリア、竣工当初の空間との意匠的連続性を配慮した意匠とするエリア、最新の機能性を整備することを優先するエリアの3つに分けた計画をし、メリハリのある改修を行っている。「つるぎ町立半田小学校管理教室棟」では、“学び舎の耐震改修と機能再生”を主目的とし、学童数の減少、授業形態の変化にも対応できるプランのあり方などを教職員、PTAの方々とのワークショップを通して決めたうえで改修しており、3寸勾配の置き屋根、南・東・西面の杉板での被覆などでデザインを一新するとともに、熱負荷削減も達成している。また、「東京大学伊藤国際学術研究センター(赤門書庫)」では、1916年に建てられた赤門書庫を、1階:フレンチレストラン、2階:ファカルティクラブ、3階:特別会議室に改修しているが、トイレ、バリアフリーの面から必要なエレベーターなどは、赤門書庫を2面から包み込む形の新築部分に設置している。「東京理科大学神楽坂キャンパス」では、順次増築されたため、統一性に欠けたデザインで、かつ一体感のない使い方をされていた7棟の建物を、年度毎に1〜3棟をほぼ半年で改修する工事を4年間続け、工作物を付加する手法などを用い、統一性のあるデザイン、使用勝手上一体感のある建物群へ改修している。
 以上4件の学校施設の他、ベストリフォーム部門の表彰物件に選定されたのは、周辺環境に溶け込んだウッドシングル葺きの外壁、切妻屋根のデザインは極力保存し、団体・パッケージ旅行から個人旅行へ変化しつつある現状に対応させるための内部改修と、景色に溶け込んだ浴室棟増築を行った「裏磐梯高原ホテル」、建替えにより空家となった3区画・5住棟をスケルトン貸しされた3事業者が、シェアハウス・菜園付共同住宅・高齢者向け住宅・介護施設として再生させた「たまむすびテラス(りえんと多摩平、AURA243多摩平の森、ゆいま〜る多摩平の森)」、“文化の顔”として生き返えさせるため、大規模な建物改修および設備の全面改修を行った「東京都美術館」の3件である。

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