第12回BELCA賞ベストリフォーム部門

新風館



所在地:京都市中京区烏丸通姉小路下ル場之町586番2

用 途:物販飲食店舗(改修後)

    電話局(改修前)

竣 工:1926年(大正15年)第一期

    1931年(昭和6年)第二期 

改 修:2001年(平成13年) 

所有者:NTT都市開発

改修設計者:鰍mTTファシリティーズ

      リチャード ロジャース パートナーシップ ジャパン

改修施工者:清水建設

この建物は、大正末期に日本近代建築の先駆者吉田鉄郎により設計され建てられた京都中央電話局を、耐震補強を施し、増改築され、専門店集積型商業施設として20011月に生まれ変わったものである。

1983京都市の登録文化財第一号に指定されたものの、60年間にわたる通信施設としての使命を終え、姉小路通及び烏丸通に面する部分のみを残し、他は取り壊され未使用の状態が長く続いていた。

歴史的景観保護のため取り残されることとなった重厚な建物に、敢えて近代的軽快なデザインを採り入れることで、「伝統」と「革新」を巧みにバランスよく融合させた建物と言えよう。すなわち、重厚な既存建物に対し、付加される増築建物は、軽さを強調したフレームで構成し、中庭を挟んで対比的な新旧2つの要素を対峙させている。増築建物のフレーム・モジュールは、既存建物と同じ5mとし、表層的な関係よりも建築の空間やボリュームといった本質的な関係で整合性が図られている。

既存建物の重厚な外観をそのまま活かすために、建物外周のウォールガーダはそのまま残し、新たに設定する床レベルを既存の腰壁レベルとして、既存の腰窓開口を店舗の出入口としている。内部空間は、この建物の最も印象的な空間を演出しているアーチ状の梁成を極力残し、必要な耐震壁による補強を施すことにより、現在の基準を満たした耐震性を確保している。

設備はすべて新規のもので特筆する点は無いが、腰壁レベルに床を設置することでフリーアクセスとしての新しい空間に、空調機器や配管・ダクトを設置し、露出部分を無くす配慮がされていると同時に、維持メンテナンスの観点で優れている。

なお、今回の対象部分ではないが、中庭部分のイベント広場にはさしたる空調がなされておらず、夏場の昼間を心配するのは、取り越し苦労というべきか。